高齢の親などが一人暮らしをしている場合,あるいは同居はしているものの自分が仕事で日中の長時間家を離れてその間一人になってしまうような場合,自分が直接目が届かない間,その人の安全をどう確保するか。見守りされる側(以下「被見守り者」)がまだ介護施設や支援施設に入る必要がなく,基本的に自活できている状態であることが前提。
以下の2つを組み合わせるしかない:
- 受動的手段: 各種センサーで被見守り者の様子をモニターする。
- 能動的手段: 被見守り者自身に何かがおかしいという自覚があったときにすぐさま,確実に外部に助けを求められるようにする。
後者の能動的手段で達成したいことは広い意味では同じなのだが,これについては稿に改め,本稿では前者の受動的手段に限って話を進める。
受動的手段は,要は被見守り者の周りにセンサーをたくさん用意して,危険なイベントの発生を検知するようにするということ。据え置き型のセンサーであれば設置できるのは基本的に自宅だけになってしまうが,被見守り者がスマホを肌身はなさず持ち歩いくことを前提にできるなら外出先でもある程度モニタリングできる。自力でインターネット接続できるスマートウォッチを身に着けている場合もそうであるし,そうでなくても,それがスマホにBluetooth接続しており,そのスマホも携帯していれば外出先でのモニタリングが可能になる。スマートバンドについても同様。
さて,上で「危険なイベントの発生を検知」と書いた。これが直接検知できるケースもある。例えば,スマートバンド/ウォッチで常時計測している心拍数が異常な数値になった,あるいは,モニターカメラに倒れた様子が映った,など。しかしこれらは少数派で,大半の場合では直接検知できるのは,むしろ「安全な状態であることを示すイベント」の方だ。例えば,朝いつものように湯沸かしポットの電源を入れた,日中いつものように家の中を動き回ってる,などなど。
憂慮すべきなのは,「安全な状態であることを示すイベント」が特定の時間を超えて起こらない場合であり,見守る側としてはこれが起こったときに通知を受けたい。そのためには,検知される「安全イベント」はそのまま通知せず(それをされても受け取る側としては単に煩わしいだけ),それらを総合的に勘案してまずい状態になっていないか判断するプロセスがどこかで常時実行され,まずい状態になったと判断されたときのみ通知が行わられる仕組みが必要になる。総合的にに判断できるためには一箇所に情報が集まっているのが望ましい。MQTTブローカに集約し,その上でNode-REDを利用して処理する,というのが定番のやり方だろうか。
検知できるイベントの種類と数を増やせば増やすほど,総合的な判断の信頼性を高められる。例えるのなら,豪快な一本勝ちは狙えないことが最初からわかっているので,小さな技ありをコツコツと積み重ねていって,最後に合わせて一本による勝利に持ち込む地道な試合運びが要求されているようなものだと言える。
具体的に,自分たちが既にやっている,ないしはこれからやることを検討しているのが以下。披見守り者にとっては,特に見守りをやっていなかったそれまでの状態と使用感が変わらず,余分な手間が発生しないのが理想的。
- 既に契約して使用している大阪ガスの「家族みるぴこ」サービスは1日ガス使用がないときに通知。ないよりましだが,もしご当人に何か深刻な事態が起こってガスも使えない状態に至っていたなら,1日後に連絡が来ても正直手遅れな気がする。
- ノバルスのMaBeeeみまもり電池は,リモコン等単3電池を使うものに電池として使えば,その機器の通電状況をリモートに知ることができる。大変優れたアイディアの製品だとは思うが,リモコンでは単4電池を使用する場合が多いのと,製品そのものが高い上に専用サービスに継続して出費し続けなくてはならないのが難。
- いわゆる「みまもり家電」。上のMabeeeみまもり電池もこの中に含められる。しばらくこの手のことについて調べていないうちにいろいろ製品が出ていて驚いた。特にHelloLight(ハローライト)。SIMカードを内蔵し,LPWA(Low Power Wide Area) で通信するとは…。
- これもみまもり家電に含めるべきかもしれないが,スマート体重計。かつて自分は,ソフトバンクが配っていた体組成計をその目的に利用していたし, ふるさと納税で新たなのを入手した。この方用に新たに購入するならXiaomi Miスマート体組成計2なんかがいいかもしれない。AliExpressで買えばいくらかは安くなるが,披見守り者には日本語で説明書や画面表示がある必要があるから,素直に日本で買うのが結局得策かも。Mi Scaleのプロトコルは既に解析されており,OpenScale: Open-source weight and body metrics tracker, with support for Bluetooth scalesというMi Fitの代替アプリがあるだけでなく,そのデータをGoogle FitやMQTTに同期するOpenScale Syncというアプリが存在する。⇨ 後日実際に購入した。
- 電力計機能付きスマートプラグを介して家電を使ってもらい,その電力使用を検知できれば理想的なのだが,今まで試した範囲では成功していない。被見守り者には若干の余分の手間が発生するが,電力計機能のない,いわば普通のスマートプラグ(例えばTuyaがOEM提供するもの)を介して家電を使ってもらい,被見守り者がスマートプラグの電源を手動でオン・オフするのを検知するという方法は考えられる。明らかに使用しているはずのない真夜中の時間帯には外部から自動的にオフにしておき,翌日被見守り者が嫌でも手動でオンにしなくてはならないようにする。ちょっと意地悪だが。
- 外出もある場合は,なんかあったときには現在位置がわかるようにスマホの設定をしておく(Find My Device)。
- あまりやりたくはないがモニタカメラの設置。これは被みまもり者にとってはプライバシーを侵害されるようであまり気分のいいものではないだろう。人感センサーであればそういう嫌悪感は抑えられる。ただ,実際に「やばいかも」というイベントが検知された際,自分でかけつけるにしろどなたかに頼んでそうしてもらうにしろ(そのためにみまもり目的の駆けつけサービスのどこかと契約しておくべきだろうか),誤報であるかないかをわかる範囲では判断したい。ご自宅は広いので全てのエリアをカバーすることは不可能にしても,いる可能性があるところにはいずれ設置させてもらいたい。問題が発生しない限り覗いたりしません,とお約束して。
“離れて暮らす家族がお互いにストレスなく安否確認 『見守りアプリ・サービス』を紹介|TIME&SPACE by KDDI” にあるアプリは地味によいかもしれない。定期的に披見守り者に簡単なアンケートに答えることを要求するもの。
「一人暮らしの老人の見守りに対するアプローチ」への6件のフィードバック