iTag BLEトラッカーを非常ボタンとして流用

ボタン付きBLEトラッカーを非常ボタンとして流用できないか考えてみた。

非常ボタンとして流用できるBLEトラッカー

最近Apple純正の紛失防止タグAirTagが発売されて話題になった。しかしBLEことBluetooth Low-Energyを利用した紛失防止タグというのは随分前から存在していて,自分もiTagと呼ばれているものを少なくとも数年以上に購入していた(Bluetoothスキャンした際には “MLE-15” と表示される)。分解写真。もちろん,AirTagの「世界中のiPhoneで形成されるネットワークで探してくれる」とか,「iPhone 11以降でサポートされる超広帯域無線 (UWB) でより細かい位置を探せる」などといった「エライ」機能は全くない。紐付けされたスマホとのBLE通信だけが命綱でそれだけでできることしかできない。ただし,タグ自身にボタンがある,極めて安価(AirTagが4,000円近くなのに対しiTagはAliExpressで探せば$2 USDしない)という点がAirTagに勝る。このボタンを非常用ボタンとして流用できないか,というのが根底のアイディア。

AirTag以前にもTileブランドの製品群があった。これらも,Tileユーザによるコミュニティーによる忘れ物探しができるという点ではAirTagと同じで,かつボタンを備えている。しかし,いかんせん高い。電池交換できるものだと2,000円ほどする。Mate (2020) など使い良さげなサイズなのに残念。あと,後で述べるようにトラッカーが本来想定していないような使い方をするために,それが実現できるサードパーティ製アプリが必要になるが,Tileに関してはそういったものが見つけられなかった。その他Nutブランドの製品も目にする。

追記: 2021年末に家族見守りサービスのLife360がTileを買収した(Tileのサービスはそのまま継続)。その後Life360が数百万人の正確な位置情報データを販売していることが報じられた。日本ではSMBCが忘れ物トラッカーTile内蔵クレジットカード「三井住友カードTile」を提供し始めた

なぜ非常用ボタン?

お世話しているご老人が非常時に他人に助けが求められるよう。携帯電話が手元にあればそれでいいのでは,と思う人は多いだろうが,そうとは限らない,と最近自分が理解したことがこのことを考えるきっかけになった。

実は私も携帯電話を持ち歩いておりさえしてくれればよいと思っていた。ただ先日ご当人に新しいスマホ機種の使い方を教えている際,それは決して当然のことではない,ということを思い知った。ご本人曰く,指紋認証はなかなか通らないとのことでセキュリティー手段としては論外。代わりに4桁の暗証番号による画面ロックを使用しているが,それを解除すること自体がスムースにはできていなかった。指先が乾いているせいか,あるいは指の腹でタップしようとせず,肉の部分が狭い指先を真上から当てようとするせいか,なかなかタッチスクリーンが思うように反応しないからだ。ご本人は「何回かやればできることだから」と極めて軽く考えていたが,私の目には「非常時に体や頭がいつものように動かない状態ではアンロックすらできず全く使い物にならない」ということを示しているのだというふうにしか映らなかった。

その意味では子供向けみまもりケータイの類はよく考えられている。特に,紐をひっぱると大音量の音が鳴ったり,しかるべき連絡先に連絡が行ったりするのは,地味だが本質的な機能を実現する,大変有効なユーザインタフェースだと言える。

とはいえ,スマホとみまもりケータイの2台持ちを期待するのはさすがに無茶だろう。実はご当人は現状では外出時でも必ずしもスマホを持ち歩いていらっしゃるわけではないのだが,どうせ持ち歩くならスマホを選択するのは当然のことだ。

だとしたら,スマホは常時持ち歩くという前提のもと,場合によっては意識がはっきりしない,体が思うように動かない,という状況であっても,確実に助けを求められるようにはどうしたらできるだろうか。そう考えて,以前買っていたiTagを流用することを思いついた。やはり物理ボタンは頼りがいがある。特に自分が持っているiTagの物理ボタンは,ゆるやかな凹状になっていて親指の腹が気持ちよく収まるいいサイズだし,しっかりしたクリック感もある。なにかの際に,スマホの画面操作はなかなかできない状態になってしまっていても,ともかくiTagのボタンを押すことさえできればSOSを発信することができる。

もちろん近くにそれに接続したスマホがあるのが大前提になる。その大前提のために,必ずスマホを持ち歩く習慣を身に着けてもらうことも課題になるのだが,それはここでは深くは立ち入らない( “人間そう都合よくあっさり死なない” はそれを説得するための材料として書いた)。

iTagのマニュアル

マニュアルは以下などで読める。他にもあるようだ

ただ,ここではiTagを非標準なやり方で利用したいわけだから,あまりマニュアルは役に立たない。

カスタムアクションを実現するアプリ

iTagのためのAndroidアプリはいくつかあるが,ここでしたいのはカスタムアクションを実現することなので,その要件は満たさないものが多い。結論としてはオープンソースの iTracing2がよい (Wiki)。1. 接続時,2. レンジ外になったとき,3. ボタンが押されたとき,4. ボタンがダブルクリックされたとき,の4種のイベントにつきそれぞれアクションを定義できる。デフォルトではダブルクリックの判定はシビアでよほど早く二度押ししないとダブルクリックとみなされない。これは判定基準が300msになっているからで, preferences の Double click delay を500msに変更すると,思うように動作してくれるようになった。

アクションは,写真撮影を含まない単純なものしか用意されていないが(ただしそれらの組み合わせは可),任意のブロードキャスト・インテントを出せるので,それを受け取れる他の自動化アプリと組み合わせればいろいろできるだろう。

このアプリはPlay Storeにあったようだが現在はないアーカイブ)。ロケーションをアクセスする権限の要求のしかたがよろしくないとして削除されたらしい。現時点で2020年12月27日の2.5.6が最新版。アプリはいろいろなところから入手できAPKpureからも最新版が入手できる

フォアグラウンドで走らせることも可能だが,バックグラウンドで走らせ,ただし,端末の機能で自動起動を防ぐ設定になっていないようにすること,また,電池節約のため自動でタスクがキルされないように設定しておくことが肝要。

しかし今までテストした範囲では大きな問題がある: iTagの電源を落とした後電源を入れ直しても,スマホに自動的に再接続してくれないことが多い。これはiTag自身の問題なのか,iTracing2のアプリの出来の問題なのかはわからない。 “Manipulating iTags with Third-Party Software” の最初に載せたBLE機器の再接続の問題についてのページを読むと,このあたりの処理にはコツがあるようで,それが原因なのかもしれない。

JG iTag Alarmはサードパーティ製のアプリだが非常に優れており,以下の連携ができる…と思いきや,なんとどうも実はiTagにスイッチが入ったときにしかアクションを起こせないもよう。それだと使い物にならない。

その他に, F-Droidから入手できるオープンソースの Gadgetbridge: A free and cloudless replacement for your gadget vendors’ closed source Android applications. See the list for supported devices というアプリがある。Amazfit Band 5のコンパニオンアプリとして知ったのだが,これがなんとiTagにも対応しているらしい。ただし,具体的に何ができるかについては全く言及がなく,実際に試してみてもそもそもアプリからiTagが全く見つけられないため何もできない。⇐ 後で購入したiTagで試したところ無事にGadgetbridgeからアクセスすることができた。ただGadetbridgeには非常に基本的な機能しかないことがわかったので,ここでの目的にはそぐわない。

想定するiTagの使用法

ご当人が外出するときに使用する可能性があるものにiTagを取り付ける。家の鍵に付けることが負担でなければもちろんそれでもよいし,そうでないなら他の外出用バッグの類にはiTagを取り付ける。安価なのだから費用は気にせずつけまくる。

通常電源は入れておかないので電池は長く持つはず。非常時にはボタン長押しで電源を入れてもらう。それだけでSOSが発信されるようにする。さらに,その後もボタンが押されるたび,新たなSOSが発信されるようにする。

iTagで外出時スマホを持ち出ることをリマインド

外出時スマホを持ち出ることをリマインドするのにもiTagが利用できるかもしれない。家の鍵など必ず外出時に持ち出すものにiTagをつけ,それは常時電源を入れておく。もし,スマホを家に置いたまま家を出ようとすると,iTagがスマホから離れていくのを検知して,警告音を出すように設定できる。

ただ,このようにすると,スマホとiTagの位置関係や,家が木造か鉄筋コンクリート造りかによっては,双方が家の中でも警告音が出る可能性がある。もしそうだと煩わしい。この辺の微調整は難しそうだ。うまくいったらもうけもの,程度の期待が現実的。

 

iTag BLEトラッカーを非常ボタンとして流用」への7件のフィードバック

  1. ピンバック: よかれと思って高齢者のAndroid端末を交換したら大変なことに | あくまで暫定措置としてのブログ
  2. ピンバック: 突然体の自由が思うようにきかなくなったときに助けを呼べるには | あくまで暫定措置としてのブログ
  3. ピンバック: Accessing iTags with Third-Party Software | あくまで暫定措置としてのブログ
  4. ピンバック: 遠隔ボタンとして使えそうなiTag以外のBLE機器 | あくまで暫定措置としてのブログ
  5. ピンバック: Amazfit Band 5はサードパーティアプリで見守りに使えるか | あくまで暫定措置としてのブログ
  6. ピンバック: 本物(?)のiTagは安定動作 | あくまで暫定措置としてのブログ
  7. ピンバック: スマートウォッチを首さげ見守りケータイとして流用 | あくまで暫定措置としてのブログ

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